第11話:【住まい決定編】65歳おひとりさまが選んだ現実解。UR一時払いで手に入れた「退路なき仕事部屋」

長かった部屋探しに、ようやく終止符が打たれた。

11月中旬、私は親の代から長年暮らしてきた東京郊外のUR賃貸団地を完全に引き払い、
都心へのアクセスが良い東京の下町エリアへと拠点を移す。

65歳、単身、身寄りなし。
前回の記事でも触れた通り、高齢のおひとりさまにとって賃貸の部屋探しは極めて高いハードルが立ちはだかる。 民間賃貸の審査で「保証人は?」「万が一の時の連絡先は?」と問われ、門前払いに近い扱いを受けることも珍しくない。

そんな私が選んだ現実的な突破口、それが同じ「UR賃貸住宅の家賃一時払い制度」だった。

URは、もともと保証人不要であり、また、一定期間(1年〜複数年)の家賃を前払いすることで、収入審査なしで契約できる仕組みがある。 「審査に怯え、頭を下げて部屋を探し回る時間と精神的コスト」を考えたとき、まとまった手元の資金を差し出してでも確実に自分の城を確保する――これこそがおひとりさまが取れる最も合理的で強い防衛策だと判断した。

もちろん、手元の預貯金はごっそりと減る。 これまでの勤め先から離れ、組織に頼らない完全な自立へ舵を切るタイミングにおいて、1年分の家賃を一括で支払う行為は、指先が少し冷たくなるようなヒリヒリとした痛みを伴う。 もしこの1年で新しい活動の足がかりを築けなければ、また別の選択を迫られるかもしれない。

だが、それでも私はこの決断を下した。
選んだ部屋は洋室2室の「2DK」。 当初イメージしていたような無機質なコンクリートジャングルではなく、
昔ながらの生活の温かさと活気が残る下町の一角だ。 交通の便が良く、都心へのアクセスも格段に向上する。 そして何より、1室をまるまる「仕事部屋(これからの執筆や探求、発信活動の拠点)」として独立させられる間取りを得た。

ただ静かに老後をやり過ごすための部屋ではない。
退路を断ち、この1年で自分自身の知識や経験を整理し、発信していくための「作戦基地」を手に入れたのだ。

スーツケース1つで身軽に生きることを決めたあの日から、荷物の引き算と並行して進めてきた住まいの再構築。 いよいよ荷造りは最終段階に入り、慣れ親しんだ郊外の団地を去る日が近づいている。

65歳からの完全な自立と再出発。 その舞台となる新しい鍵を、私は今、しっかりと握りしめている。

(第11話・了)