机の上に、見ないふりを続けてきたレシートの山がある。
7月から10月の今日まで、まるまる3ヶ月分。
「引越しの準備で忙しいから」「今はそれどころではないから」と言い訳を重ね、
家計簿をつける手を止めていたツケが、白い紙の束となって私を無言で見上げている。
荷物の整理と処分に追われる日々の中で、痛感していることがある。
モノを捨てるのと同じくらい、いや、それ以上に急務なのは「お金のダウンサイジング(引き算)」だ。
現役時代の収入が途絶え、貯金の取り崩しや限られた年金で生活を回していく「リタイア1年目(無収入1年目)」。
世のマネー本を開けば「iDeCoの出口戦略」だの「国債の取り崩しシミュレーション」だの、
小綺麗な資産運用の話が並んでいるが、そんなものは何年も先の未来の話だ。
いま目の前にある現実は、もっと泥臭く、生々しい。
賃貸の部屋探しを進める中で突きつけられる、65歳・単身・身寄りなしという現実。
審査の壁を突破するための現実的な手段として浮上するのが、「家賃1年分の前払い」だ。
確かに、1年分を先に差し出せば当面の住まいは担保される。
だが当然、虎の子の預貯金はごっそりと目減りする。
定期収入のない新生活をスタートさせるにあたり、
まとまった現金が手元から消えていくプレッシャーは想像以上に重い。
「増やす」ことを夢見ている場合ではない。
いま真っ先に構築すべきは、手元の資金を守り抜き、生活の出血を極限まで止める「守りの防衛線」だ。
だからこそ、Notionの2番目の棚「契約・お金の整理」の出番となる。
銀行口座の絞り込み、使っていないクレジットカードの解約。
そして何より、平時は「数百円だから」と見過ごしがちなサブスクや固定費の洗い出し。
倒れたときや死後、誰にも気づかれず口座から延々と引き落とされ続ける
「課金地獄」を止めるための整理でもある。
まずは机の上のレシートの山と向き合い、自分が毎月何にいくら払っているのか、
その実態を直視することから始めなければならない。
家賃を前払いして手元の現金が減るからこそ、月々の「生きているだけで出ていくお金」を
トランク1つ分に削ぎ落とす。
溜まりに溜まったレシートの束を前に、私の「お金のサバイバル」がいよいよ始まった。
(第10話・了)
