第7話:家具は捨てられてもスマホはお手上げ。おひとりさまが「Notion」に辿り着いた理由

母を見送り、保険や共済の整理を一段落させたある夜、ふとデスクの上のスマートフォンを見つめて背筋が寒くなった。

「今夜、もし私が突然倒れたらどうなるだろうか?」

部屋にあるテレビや冷蔵庫、本棚の書類といった「目に見えるモノ」は、最悪の場合、誰かに「すべて処分してください」と頼めば物理的に片付く。業者を呼べば数日で部屋は空っぽになるだろう。

しかし、手のひらに収まるこの四角いガラスの板——スマートフォンだけは、そうはいかない。

指紋認証や顔認証で守られた画面の向こうには、ネット銀行の口座、証券会社のログイン情報、毎月引き落とされるサブスクリプションなどなど、私の生活と財産のすべてが詰まっている。

暗証番号が分からなければ、誰も中に入れない。まさに完全なブラックボックスだ。残された知人や専門家がいくら善意で動こうとしてくれても、ロック画面の前で全員お手上げになるのは目に見えている。

紙のエンディングノートに感じた「小さな違和感」

もちろん、いわゆる「終活」の定番である市販のエンディングノートも検討してみた。書店に並ぶノートは装丁も美しく、項目も丁寧に整理されている。

だが、実際にペンを握ろうとして手が止まった。

現代のデジタル生活は、あまりにも流動的だ。サービスのパスワードは定期的に変更するし、利用するサブスクも増減する。そのたびに紙のノートを二重線で消して書き直すのだろうか。修正だらけで見づらくなったノートを遺すのは、少々耐えがたい。

さらに言えば、重要なパスワードや資産情報をすべて「手書きの紙1冊」にまとめて本棚に置いておくのは、セキュリティの観点からも心もとなかった。

必要なのは、固定された記録帳ではなく、日々の変化に合わせていつでも手軽にアップデートできる「動的な管理システム」だ。

「自分仕様」の管理ツールを求めて

そこで行き着いたのが、クラウド型情報管理ツールの「Notion(ノーション)」だった。

Notionを選んだ理由は極めてシンプルだ。

更新のしやすさ: 内容が変わっても、キーボードで数秒修正するだけで常に最新の状態を保てる。

項目の自由度: 市販のノートにありがちな「自分には不要な項目」を削ぎ落とし、おひとりさまのデジタル資産に特化した構造をゼロから組める。

安全な共有: 普段は強固なセキュリティで保護しつつ、万が一の際には特定の信頼できる人や士業の先生にだけ閲覧権限を渡す設計ができる。

めんどくさがり屋の私にとっても、一度ベースとなる型さえ作ってしまえば、日々のメンテナンス負担は驚くほど軽くなるはずだ。

おひとりさまのための「デジタル仕様書」作りへ

世間一般のエンディングノートが「人生の振り返りや思い出」を重視するものだとしたら、私が作りたいのは、万が一のときに周囲が迷わず動けるための「人生の取扱説明書(システム仕様書)」である。

まずは最優先で、以下の3大ブラックボックスの整理から着手することにした。

  1. スマホ&主要アカウント(すべてのマスターキー)
  2. ネット銀行・証券(オンライン資産の全貌)
  3. サブスク・Web契約(放置すると課金が続くもの)

完璧なものを作ろうと気負う必要はない。自分が使いながら、必要な項目を1つずつ埋めていけばいいのだ。

次回は、私が試行錯誤しながら実際に画面上に組み立てている「おひとりさま防衛Notion」の具体的な項目と構成について、少し踏み込んで紹介したい。

(第7話・了)